神と僕と魔法を夢で(7)

「千三百七十円になります」

そこには三人分のコーヒーを奢らされている青年の姿があった。僕のことだが。

だいたいにして、おごられる側は気を使って安いものを注文するのが常識というものだ。なぜに三百円以上するようなコーヒーばかりこの子達は頼んでいるのだろうか?問い詰めたい衝動を抑えながら僕はトレーに乗せたコーヒーを席まで運ぶ。どこまでも情けないな僕は。

「遅いよ千厘くーん」

「うっせ」

「遅い男は女泣かせといいますよ?」

「遅い男は女泣かせといいますね?」

「黙れ」

もうやだこんな生活。僕が一番輝いていたころに戻りたい…。いやそんな時代は人生で一度もないか。

「遅いのは僕の努力ではどうにもならないよ。店員にクレームしてくれ」

「人のせいにするのはいけないと思うな」

「もう帰ろうぜ!」

「はぁー、面白い。きてよかった」

「ふぅー、面白い。きてよかった」

「みせもんじゃねーよ!」

このステレを姉妹は僕を苦しめるために生まれてきたに違いない。ゲームで言う中ボス的なお邪魔キャラだ。ほんと、どっかにいってくれないかなー。苦手なんだよな、どっちにつっこんでいいかわからないし。スルーがベターなんだろうな。つけあがられても困る。先輩として厳しい現実を教えてやらねば。いつまでもつっこんでいると思うなよ?この疫病神双子が。

僕が心の中で愚痴をいっている間に女子三人は盛り上がっている。この場に必要ない人物が明白だった。こんな日もある。さっさと図書室に行こう。安寧の地が僕を待っている。そう、僕には行くべき場所と待ってくれる本がある。

「千厘君聞いてる?」

「いや、聞いてないぞ」

「もー、会話に参加しようよ!」

「すまん、まぁ適当に会話を楽しんでくれ。僕はお前らにつっこみすぎて小休憩したい気分なんだ」

「「体力ないんですね」」

「本日初のハモリがそれかよ!何かほかにもタイミングあっただろが」

「いやー、なかなか大変なんですよ?あわせるの」

「私達の苦労も知らずに口を出さないでほしいです」

「千厘君ひどいこといわないの」

神様、僕がいったい何をしたって言うんですか?あんまりにも仕打ちがひどすぎます…

楽しい時間はすぐに過ぎていく。辛い時間はいつでも待っている。僕は一瞬でも長くこのひと時を堪能しようと思いながら、彼女たちにつっこみ続けていこうと誓った。

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