神と僕と魔法を夢で(5)

小川洲水子。今僕の隣を歩いている無邪気な女子高生。最近長かった髪の毛をショートカットにした愛すべき馬鹿。これでも陸上の長距離では県内でもトップクラスのタイムを誇る。それでも陸上部ではないのでそっち関係からの勧誘は後を絶たない。才能がある、いや実力があるのに勿体ないと僕は思うが、まぁそればっかりは本人の意思によるところだから僕はあまり口を挟まない。個人的には練習している姿をじっくり眺めたくはあるのだが…

それでね、あのお店のケーキが最高においしいのッ!

あぁ、平和ってすばらしい。

「おーい、きいてる?」

「ああ、すまん。僕と付き合いたいって話だったよな?」

あッ、ドン引きしてる。

「千厘君は面白いことをいうよね。うん、面白い、面白い」

「やめて、そんな風に見ないで!」

「反省」

僕は調教された猿のごとく小川の肩に手を乗せて頭を垂れた。

「よろしい」

毎度のように馬鹿馬鹿しいやり取りをしていると、またも前方から見知った顔がやってきた。できれば会いたくない人物だったので、僕は声をかけられるまでシカトしようと心に誓った。

「あれ?咲耶ちゃんに知流ちゃんじゃない!きぐー」

お前というやつはなんてことをしてくれるんだ。僕の誓いは儚くも隣人に挫かれた。

「これはこれはミコ先輩ではないですか」

「これはこれはミコ先輩でしたか」

また面倒くさい展開になりそうだなぁ。というか作者の実力的に一場面に四人の登場人物はきつい気がするぞ。

「よく見たら千厘先輩もご一緒のようで」

「よく見たら千厘先輩もご一緒でしたか」

「よく見なくても気づけ」

「またまた、避けていたくせに」

「またまた、避けていたはずです」

「またまた、妄想の世界に突入していたくせに」

「小川、てめぇ乗っかってんじゃねぇよ!誰がどれ言ってるか文じゃ分り難いんだよッ!!」

まぁ、発言の質で大体わかるけど甘やかすと後々大変だからけじめはつけとかないとな。

「連れないな千厘君は」

「突っ込んだんだから十分付き合いがいいだろうが」

「先輩、そう目くじらを立てずに」

「先輩、そう目くじらを立てないで」

なんだろう?本来は女子三人を相手しているはずで、喜ぶべきことのはずだが、ただただ疲労感に襲われてしまう。

「ところで先輩方はこれから何処かに向かっている途中ではないのですか?」

「ところで先輩方はこれから何処かに向かっている途中のようですね」

この双子に閑話休題されると腹が立つのは僕の心が狭いだけなのだろうか、いや断じてノーだ。

「うん、これから二人で心霊スポットに行くところなんだー」

「おおー、いいですね」

「おおー、素敵です」

「おぉうッ!?、行き先の捏造ですねー?」

「違うのッ?」

「さっきまでのやり取りはなんだったんだよ!」

「まぁまぁ落ち着いて、良かったらそこの喫茶店で状況整理でもしませんか?」

「まぁまぁ落ち着いて、良かったらそこの喫茶店で状況整理でもしましょう」

「そうだね、ちょっと心霊スポットに行くには時間が早いし、そうしようか?」

「もう好きにしてくれ…」

面倒くさい双子姉妹に促されて喫茶店に入っていく。主導権はいまやこの二人に渡っていた。今日という平和な一日が早くも終わり、地獄の宴の時間が始まるのを感じつつも流れに身を任せる覚悟を僕はした。



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